おかやまハンセン病啓発WEB ハンセン病を正しく理解するために ~みんなで描くひとつの道~

歴史

1991年〜
[時代背景]

・大谷見解発表
・全国国立ハンセン病
療養所所長連盟
見解発表
1994年
(平成6年)

 ハンセン病予防事業対策調査検討会の大谷藤郎氏が私的見解として「らい予防法廃止」「処遇保障の継続」を全患協に示しました。また、全国国立ハンセン病療養所所長連盟より「らい予防法」は廃止を含んだ抜本的見直しが必要であるとの見解が発表されました。
 翌年示された日本らい学会の見解も、医学的にみてらい予防法は廃止すべきであると発表され、各方面から相次いで「らい予防法」廃止が叫ばれました。

「らい予防法」廃止1996年
(平成8年)

 法律第二十八号「らい予防法の廃止に関する法律」が公布、ついに念願の時が訪れました。同時に「らい予防法」の廃止に関する法律」が制定されました。  この年、「全患協」が「全療協」と呼称を改めました。

熊本地裁に「らい予防法」
違憲国家賠償請求訴訟
が提訴された
1998年
(平成10年)

 星塚敬愛園(鹿児島県)、菊池恵楓園(熊本県)の入園者13名が、90年にも及ぶ人権侵害への謝罪と賠償を国に求めました。

・東京地裁に
「らい予防法」
人権侵害謝罪
・国家賠償請求訴訟
が提訴
・岡山地裁に
「らい予防法」
違憲国家賠償請求
訴訟が提訴
1999年
(平成11年)

長島愛生園・邑久光明園の入園者11名。

「瀬戸内ハンセン病訴訟原告団」※この写真は山陽新聞社の転載の許諾を得ています。

熊本地裁で判決、
原告勝訴
2001年
(平成13年)5月11日

 5月11日、熊本地裁は、ハンセン病政策による人権侵害を訴える原告の主張を認めました。国は控訴を断念し、判決は確定しました。

以下抜粋・要約

1.遅くとも昭和35(1960)年以降においてハンセン病は隔離政策を用いなければならない特別な疾患ではなくなり、すべての入所者及び患者について、隔離の必要性が失われた。厚生省としてはこの時点で、隔離政策の抜本的な変換をする必要があったが、「らい予防法」(新法)廃止までこれを怠っており、厚相の職務行為に国家賠償法上の違法性及び過失と認めるのが相当である。

2.隔離規定は昭和35年には合理性の根拠を全く欠いており、違法性が明白になっていた。昭和40年以降に新法の隔離規定を改廃しなかった国会議員の立法上の不作為につき、国家賠償法上の違憲性及び過失を認めるのが相当である。

小泉首相控訴
断念を表明
2001年
(平成13年)5月23日

 各地の国家賠償請求訴訟における原告「完全勝訴」のほぼ2週間後、政府は、「本来なら控訴せざるを得ない」としながらも「お詫び」を表明し、小泉純一郎首相は控訴を断念、同時に患者への救済策なども決定しました。
 控訴断念についての福田康夫官房長官談話

 以下抜粋

 わが国においてかつて採られたハンセン病患者に対する施設入所政策が、多くの患者の人権に対する大きな制限、制約となったこと、また、一般社会において極めて厳しい偏見、差別が存在してきた事実を深刻に受け止め、患者・元患者が強いられてきた苦痛と苦難に対し、政府として深く反省し、お詫びを申し上げるとともに、多くの苦しみと無念の中で亡くなられた方々に哀悼の念をささげるものである。
 本判決は、ハンセン病問題の重要性を改めて国民に明らかにし、その解決をうながした点において高く評価できるものであるが、他方で本判決には、別記に示すような国政の基本的なあり方にかかわるいくつかの重大な法律上の問題点があり、本来であれば、政府としては、控訴の手続きをとり、これらの問題点について上級審の判断を仰ぐこととせざるを得ない所である。
 しかしながら、ハンセン病訴訟は、本件以外にも東京・岡山など多数の訴訟が提起されており、また、全国には数千人に及ぶ訴訟提起されていない患者・元患者の方々がおられる。さらに患者・元患者の方々はすでに高齢であり、ハンセン病問題はできる限り早期に、そして全面的な解決を図ることが必要である。
 このような状況を踏まえ、政府としては、極めて異例の判断として、本判決の法律上の問題点についての政府の立場を明らかにした上で、政府声明を発表し、本判決についての控訴は行わず、本件原告の方々のみならず、また各地の訴訟への参加・不参加を問わず、全国の患者・元患者の方々全員を対象とした、以下のような統一的な対応を行うことにより、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図ることとした。(以下略)

衆議院
〈ハンセン病
問題に関する
国会決議〉
2001年
(平成13年)
5月23日

 去る5月11日の熊本地方裁判所におけるハンセン病国家賠償請求訴訟判決について、政府は控訴しないことを決意した。本院は永年にわたり採られてきたハンセン病患者に対する隔離政策により、多くの患者、元患者が人権上の制限、差別等により受けた苦痛と苦難に対し、深く反省し謝罪の意を表明するとともに、多くの苦しみと無念の中で亡くなられた方々に哀悼の誠を捧げるものである。
 さらに、立法府の責任については、昭和60年の最高裁判所の判決を理解しつつ、ハンセン病問題の早期かつ全面的な解決を図るため、我々は、今回の判決を厳粛に受け止め、隔離政策の継続を許してきた責任を認め、このような不幸を二度とくりかえさないよう、すみやかに患者、元患者に対する名誉回復と救済等の立法措置を講ずることをここに決意する。
 政府にいても、患者、元患者の方々の今後の生活の安定、ならびにこれまで被った苦痛と苦難に対し、早期かつ全面的な解決を図るよう万全を期するべきである。
 右決議する。

ハンセン病問題に
関する検証会議
2002年(平成14年)
10月~2005年
(平成17年)3月

 ハンセン病患者に対する隔離政策が長期間にわたって続けられた原因、それによる人権侵害の実態について、医学的背景、社会的背景、ハンセン病療養所における処置、らい予防法などの法令等、多方面から科学的、歴史的に検証を行い、 再発防止のための提言を行うことを目的に、厚生労働省から財団法人日弁連法務研究財団に委託されて実施されました。
 検証会議を構成する委員は、ハンセン病元患者、マスコミ関係者、弁護士、療養所長、学識経験者ら13名で、このほか 、検証活動に必要な調査、検討、報告書の作成等を行うために、検討会委員20名が加わり、全国(15箇所)と韓国及び台湾(2箇所)のハンセン病療養所を訪問して現地検証を行いました。
 約2年半にわたっての検証調査の結果は、2005年3月に、1500頁に及ぶ最終報告書としてまとめられました。

アイスターホテル
宿泊拒否事件
2003年
(平成15年)11月

 熊本県が計画していた「ふるさと訪問事業」で、熊本県内のホテルが、感染の危険がないにもかかわらず、他の宿泊者に迷惑がかかるとして、菊池恵楓園入所者の宿泊を拒否しました。
 その後、ホテル側が形式的に謝罪したことに対し、入所者自治会が謝罪の受け入れを拒否したことが報道されると、全国の一般の方から、入所者に対する誹謗中傷の電話や手紙が相次ぎました。
 これは、ハンセン病に対する世間一般の理解不足と偏見・差別の根深さを改めて痛感させるものでした。

天皇皇后
両陛下行幸啓
2005年
(平成17年)10月23日

 天皇皇后両陛下が、瀬戸内市長島にある2つの国立療養所、「長島愛生園」と「邑久光明園」を初めて訪問されました。この行幸啓は、岡山県で開催された第60回国民体育大会秋季大会開会式への両陛下の御出席にあわせて実現したものでした。  午前中に長島愛生園、午後に邑久光明園を訪問された両陛下は、それぞれの納骨堂に献花をされた後、入所者の方々と御懇談されました。

胎児等合同慰霊祭
(邑久光明園)
・水子地蔵慰霊式
(長島愛生園)
2006年
(平成18年)
10月3日

  「ハンセン病問題に関する検証会議」で、全国の療養所に、ホルマリン漬けにされた胎児や新生児が保存されていたことが報告されました。 この子どもたちを慰霊するため、邑久光明園では胎児等合同慰霊祭が、長島愛生園では水子地蔵慰霊式が丁重に営まれました。

「ハンセン病問題の
解決の促進に
関する法律」の制定
2008年
(平成20年)
6月18日公布

 この法律は、ハンセン病に関する様々な問題の解決を促進することを目的に、国立ハンセン病療養所等における療養や生活の保障、入所者の方々の社会復帰や生活の支援、名誉の回復や死没者の追悼、親族に対する援護等が定められています。 また、入所者の良好な生活環境を確保するために、療養所の土地や建物、設備を地域住民等でも利用できるようにすることなどが盛り込まれており、ハンセン病回復者やその家族の方々が、社会で充実した生活を送ることができるようにするための様々な措置を定めています。

「ハンセン病家族
国家賠償請求訴訟」
の提起
2016年
(平成28年)
2月

 ハンセン病隔離政策により、家族も差別などの被害を受けたとして、全国の元患者の家族が熊本地裁に「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟」を提起しました。

熊本地裁で判決、
原告勝訴
2019年
(令和元年)

 6月28日、熊本地裁は「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟」で、国の責任を認めました。
 7月12日、内閣総理大臣は控訴しない旨を表明しました。

「ハンセン病問題の
解決の促進に
関する法律」
『一部改正』
2019年
(令和元年)
11月22日公布

「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟」判決の後、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」が一部改正され、差別禁止や名誉回復、福祉増進などの諸規定の対象に「家族」が加えられました。

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